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今日は、ダナンの枯れ葉剤被害者であるグエン・ゴック・フオンさんという一人の男性をご紹介したいと思います。
当ブログで、見覚えのある方がいらしたら、記憶力抜群の方です。
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グエン・ゴック・フオンさんにとって、生まれ持った自分の障害が大きすぎたと思ったことはなかった。コツコツと、ひたすら耐えて、人生を切り開いてきた。彼の前に現れた人は、すばらしい人ばかりだった。
出生時の身長はなんと20センチ、体重はわずか0.8キロだった、という。だから、グエン・ゴック・フオンさんの人生は苦難の連続だった。
7才の時、故郷、中部クアン・ナム省の上り下りのあるでこぼこの山道を、5キロも毎日歩いて通学した。
彼は、自分の教室の黒板の前の机にたどり着くまでに、重い折り畳み式椅子を持ち歩いたのだ。 彼は、平坦でない田舎道では転ぶこともしばしばだった。
彼の一歩は、同級生の3分の1のサイズしかなかった。友達といっしょに登校するには、走ることもあった。追いつかないのだ。そして、ひたすら歩いた。彼のペースでいくなら、人の三倍の時間がかかった。
悪いことがやってきた。彼の通っていた学校が、家からさらに十何キロも遠くに移転することになってしまった。 フオンさんの両親は、健康と安全を気遣って、家で勉強させたいと学校に頼んだ。
7年間、フオンさんは、家の周囲の小さな雑用をし、両親を手伝いながら、在宅で勉強した。
しかし、「何もしないで、貧困に苦しむ両親を見るにしのびなかった」と、フオンさんは言った。
「それから、私は自殺を考えた!でも、私は思ったのだ。私が生まれた時に、もし両親が私が生きることを望まなかったなら、私を殺していたろう・・・と。だから、私は生きる努力をしていかなくてはならないのではないか」と、彼は言った。
15歳で家を出たフオンさんは、街でライターに液体燃料を充填する店で働いた。その後、腕時計と時計を修理術を学んで、別の店で仕事を得た。
彼は、自分自身と家族を養っていけるまでに稼げるようになりつつあった。
家族はこれが奇跡であると思った。しかし、フオンさんの成功は序の口だった。ホーチミン市へ出て、この大都市で仕事のチャンスを見つけようと決心したのだ。
ホーチミンへ乗り込む
フオンさんがホーチミンへ出たのは、ちょうど二十歳。でも体重は20キロしかなかった。ホーチミン市で勉強している彼の親友が、仕事を探すために、いくつかの職業紹介所に連れていった。
カット・ティン電気機械店の経営者マイ・タイン・ホアンさんが、フオンさんの願書に興味を示した。ホアンさんは、フオンさんを訓練すればなんとかなると、食事も提供することに同意した。
しかし、社長は、見るところをちゃんとみていた。フオンさんがどのくらい勤勉に働き、どれくらい速く技術を飲み込んでいるかを知った社長は、フオンさんを普通のパートタイムの従業員にとどめておくのはもったないと・・・、フオンさんにすべての秘密を伝授し、昇進させて、平均より高い給料で遇した。
「私は、8年間サイゴンで自信と大きな活気をもって暮らした」と、フオンさんは振り返った。
やがて、フオンさんは、ホーチミンでお金を貯めた後、クアンナム省の実家に戻る決心をした。
「私は、故郷の両親のことを一度も忘れたことがなかった!」と、彼は言う。
2007年に故郷に戻って、フオンさんは金を借り、自分の貯金もはたいて、両親の住む所からさほど遠くないダナン市内に店を開業した。
フオンさんに固定客がつき、利益をあげ、社員の訓練をするまで、若干の時間がかかった。しかし、今は成功している。
そして、彼は、仲間を育てるために、ダナンの枯れ葉剤被害者を支えるダナン・センターの職業訓練コースで教鞭もとっている。
「毎日学生と交流し、彼らの逆境を理解しながら、私は、自分のハンディが彼らのものと比較しても何の引け目もないということがわかった」と、誇らしげだ。
フオンさんは、教師として忍耐と優しさを学んだと言う。彼は現在学校で最も人気のある先生となっている。そして、クラスでほとんどの学生を惹きつけるほどだ。
その傍らで、彼はまた、ダナンの枯れ葉剤被害者協会のスタッフにもなっている。おそらく、ヒエン会長のたっての要望でもあったろう。
いつも、ダナンの枯れ葉剤被害者センター1を訪問するときに、オーディオの機械の調整でお世話になるフオンさんの来し方を、私は紹介したかった。
2008年9月、フオンさんは、枯れ葉剤被害者協会の他の代表と一緒に”ピース・ボート”に乗船し世界平和を進めている海外をめぐった。それが、いい思い出になっているという。下の写真は、ピースボートで、原爆被災者の手を握って激励するフオンさんである。
苦境にめげない忍耐力・・独学と修行で切り開いた技術と生きる道・・勤勉さ・・・知れば知るほど、私の心には尊敬の念が湧いてくるのだ。(おわり)
愛のベトナム支援隊・北村 元
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